アジアンレストランの進退をかけた、ライスヌードルの開発
「その街の、鼓動が集まるレストラン。」を創るという志を掲げ、都内中心に様々なジャンルのレストランを展開する株式会社HUGE。料理やサービスに磨きをかけ、お客様がわくわくする店づくりで100席を超える大型店を次々と成功させている。
代表取締役社長 兼 CEOの新川義弘氏がはしづめ製麺を知ったのは、行きつけの蕎麦屋の大将の一言ーー「製麺会社が経営している面白い麺のレストランがある」が始まりだった。好奇心旺盛な新川氏はすぐに「広尾はしづめ」に足を運び、その麺の美味しさに驚いたと言う。それ以来、麺に困ったらはしづめ製麺に相談すると言う新川氏。アジアンレストランで新業態を出店する際も、美味しい麺を作るためにはしづめ製麺代表取締役社長 ヌードルアーティスト 橋爪利幸氏と二人三脚で開発を重ねてきた、その背景と想いを伺った。
真っ白いキャンバスに、レストランを自由に描く
―――料理の世界には、いつ頃から興味を持たれたのでしょうか?
もともと両親が食堂をやっていて、東京に上京して料理学校に通いながら、実家とは別の飲食店で働いていました。実家のお店の手伝いはあまりしなかったのですが、父親は料理人、母はお店に立って、お客さんに叱られたり喜んだりしてもらいながら、小さい頃からずっと生活の中にお店がありましたね。気がつけば、他の仕事は一切やらず飲食一本でやってきました。
卒業後は22年間グローバルダイニングという会社で働いていました。そこではアメリカに行かせてもらったり、色んなコンセプトのお店を作ったり、株式上場というダイナミックなステージも見せていただきました。最後の数年は副社長を勤めさせていただきました。ビジネスマンとして本当にたくさんの学びをもらいましたね。
いろんなことを経験する中で、誰かの筋書きではなく真っ白いキャンバスに自分で絵を描いてみたいと思うようになりました。それがHUGEを立ち上げたきっかけですね。2005年、42歳の時に独立・創業しました。
―――HUGEとは、どんな会社なのでしょうか?
HUGEを一言で言うと「レストラン屋」。
僕の趣味は旅行と食べること。世界中の旅先で見てきたものをどうやって作るんだろう、これが原宿にあったら面白いんじゃないかとか、妄想しながらピースを埋めていく、そういう癖があるんですよね。
とはいえ、カチッとピースがはまることって、本当に少ないです。それに、僕が自分の思考と考え方で会社を動かしてしまうと、これは会社を暴走させちゃう可能性があります。
そこで、新しいことを取り組むときに必ずやることがあります。熱くなってる時に、仲間に向けてまず言ってみるんですよ。
「超うまい〇〇の店見つけたんだけど、〇〇屋やろうよ!」って。
同世代、若い人、そして出来れば全く異業種の人にも伝えるようにしています。自分のアイデアにいろんな人が興味を持ってもらえた時は、成功に近づくんですよね。カタチにしていくっていろんな考え方があるんだろうけど、「レストラン屋」ってのはそういうことかなと思ってます。
最高の『ライスヌードル』をつくるため、ベトナムへの開発の旅
―――はしづめ製麺さんとのお取引の中で、印象深い出来事はなんでしょうか?
アジアンレストランを始めるために、『ライスヌードル』を一緒に開発したことです。
イタリアンのお店をやっていたので、イタリアンの麺に慣れていたんです。だから以前プライベートでベトナムに行った時にビーフンを食べると「素麺みたい!」って思ってしまいました。イタリアンの麺にはグルテンが入っているから弾力、噛みごたえがあるんです。その経験があったから最初に「ライスヌードルにグルテンって入れられる?」って、はしづめ製麺さんに相談して困らせました(笑)。
僕、興味がある人と一緒に体験したい欲求があるんです。一緒に現地のものを見たり、一緒に食べたり飲んだりすると、やっぱりお互いやりたいことがリアルに分かってきますからね。
だから『ライスヌードル』の開発をするときも、「それなら一緒に現地に行きましょう」って、ヌードルアーティストの橋爪社長をベトナムにお誘いしましたね。『ライスヌードル』開発の旅です。
―――麺を作るために現地に行かれたとは、すごいですね。
これからは、亜流だろうと我流だろうと本場じゃないと言われても「美味しい!」って大事だと思うんです。噛みごたえのある美味しい米粉を使った麺。そういう麺をお客様も食べてみたいと思うんじゃないかと思って、その企画を一緒にやりましょう!って、説得しましたね。
アイデアは僕が出して、ヌードルアーティストの橋爪社長が試作する。試作した麺は自分の店の料理人にも試してもらいながら二人三脚で完成に近づけていきました。トータルでは10回以上試作しました。半分くらい試作した時点で、本当に申し訳なかったんですけど、「ちょっと違います」って言ったこともありました。その後も何度か繰り返して、やっとお互いのイメージが合致しました。
こだわった甲斐あって、この『ライスヌードル』は本当に、大ヒット商品になりました。アジアンレストランは4店舗あるんですが、今も全店でダントツの一位はこの『ライスヌードル』を使ったフォーです。
―――すごい。麺づくりへの熱量がヒット商品を生み出したんですね。
フォーのスープのベースは鶏出汁。炙った鯛の骨のあらと昆布を入れて、人工・化学調味料を使わず、天然のものしか使ってないです。
もちもちでしっとりとした食感の『ライスヌードル』と合うように、スープもこだわって調合してます。ベトナムで食べるそれと似てるんですが、似て非なるもの。進化してますよ。うちの店で働くベトナム人も「こっちの方が美味しい!」って言ってます(笑)。
さらに言えば、この『ライスヌードル』は炒めても美味しいので、パッタイの麺としても使っています。ベトナムのような暑い国の料理は、辛い・甘い・すっぱい・苦いの4つのハーモニーが突き抜けてる。辛さのあとに甘さを感じたり、一つの料理の中で色々味わえるのが楽しいですよね。
実はこの『ライスヌードル』ができなかったら、アジアンレストランはやめようとも思ってましたから、一緒に作って本当に正解でした。
はしづめ製麺さんのいいところは、妥協しないところです。一度完成してからも改良を重ねて、麺がどんどん美味しくなっていってます。いまだに進化してますね。
食いしん坊で凝り性。だから、新しいアイデアが生まれる
―――今まで数々のお店を作られてきて、それぞれに全力で向き合うその原動力とは?
凝り性で食いしん坊だからかな。食いしん坊じゃなければ、本質的には飲食店はやっちゃいけないんじゃないかと思っています。
興味あるものがエネルギーのすべてで、元気で笑ってる時にこそ新しいアイデアが生まれる。机の上で書類見てても新しいアイデアは出てこない。笑って食べて飲んで、「うまいっ!」って言って。その中の大事な楽しみの一つがやっぱり麺なんですよ。
麺は可能性が無限大。例えば、僕がこれから中近東料理の店をやったとしても、必ず麺やパスタがある。そういった新しい麺のアイデアが出てきたら、すぐはしづめ製麺さんのところに行って「こういうの作れる?」って相談すると思います。それで現地に行かないとわからないから、一緒に行くことになりますね(笑)。
―――最後に、これから挑戦したいことや作りたい商品などありましたら教えてください。
東京は食の都で、世界中の料理をこんなに美味しく、清潔で安全に食べられる都市はないと思います。その中でも“足りていないピース”がある。何かを起こすっていうのは、“足りないピース”に対して情熱を注ぐことで、それが僕らにとってはレストランってピースなんです。
例えば、人々が賑わうスケールの大きいレストランが東京には少ない。そこで大都会東京に、「THE・東京」みたいなレストランを作っていくのがHUGEのミッションだと思ってます。
日本らしさではない、“東京らしさ”。大阪なら大阪らしさ、福岡なら福岡らしさがあると思うんですが、東京を主戦場としてやってるんだったらやっぱり、“東京らしさ”を出していきたいですね。どのお店でもHUGEの軸からブラさない方がいい。それが僕らが、社会の中で必要とされているポイントだと思っています。
それと、次は面白いワンタンを作ってみたいですね。ワンタンって白いイメージですけど、青とか黄緑色とかあってもいいんじゃないかなと思うんです。真っ赤な唐辛子のワンタンとか。重ねたセイロから、色とりどりのワンタンを選ぶ。想像するだけでワクワクします。是非ともやりたいですね。
プロフィール
新川 義弘 氏
1963年生まれ。株式会社HUGE(ヒュージ)代表取締役社長 兼 CEO。
1982年、福島商業高校卒業後、新宿東京会館(現・ダイナック)を経て、
1984年に長谷川実業(現・グローバルダイニング)入社。
1998年、当時のブッシュ大統領と小泉首相の会談のサービスを担当し注目を集める。
2005年、同社を退職し、株式会社HUGE(ヒュージ)を立ち上げる。
2006年4月、HUGE1号店である「カフェ リゴレット」、ファインダイニングの「レストラン ダズル」をオープン。
以降関東を中心に仙台・沖縄・京都に店舗を展開。
2019年ハワイ・オアフ島にスパニッシュイタリアン「Rigo」を海外初出店。
著書に「愛されるサービス」(かんき出版)、「欲の経営」(日経BP社)。
https://www.huge.co.jp/
DADAÏ THAI VIETNAMESE DIMSUM
- ウェブサイト
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