USER’S VOICE宮廷中国菜 FULONG
オーナーシェフ 小峯 愼志

宮廷中国菜 FULONG オーナーシェフ 小峯 愼志

センスと感覚で仕上げる、出来立てがいちばん美味しい上品な麺料理

日本のホテル初の中国料理店として創業した「中国料理 北京」の料理長を21年、そのうち帝国ホテル店料理長を12年務めた小峯愼志氏。2021年3年には、地元府中で「宮廷中国菜FULONG」をオープンし、これまで培われた中国宮廷料理の技術を活かしながら、オリジナリティのある料理を提供している。シンプルで繊細、そして何より上品な味付けを得意とする小峯氏に、中華料理の道に進んだ経緯から、独立のきっかけ、はしづめ製麺の特注麺を使ったオリジナルメニューが生まれた背景ついて伺った。

料理長に実力を見いだされ、帝国ホテル「中国料理 北京」へ

―――小峯さんは長らく「中国料理 北京」の料理長を務められていましたが、もともと料理の道に進みたいと思われたきっかけは何でしたか?

神奈川の全寮制の高校に通っていた時に、中華街が近かったので、そこでアルバイトをしていたんです。もともと食べるのは好きだったので、働いているうちにさらに食に興味を持つようになり、その時に進みたい方向性が決まったような気がします。

高校卒業後は中華料理店に就職したのですが、早く料理人になるには調理師免許をとった方がいいのかなと思い、調理師学校に入学することにしました。卒業後、学校に紹介してもらった街中華のお店で働いたのちに、結婚式場の仕事をしていたところ、日本中国料理協会を通じてつながりのあった北京の料理長が、僕を採用してくれたんです。

北京に中途入社した当時はまだ26、7歳の小僧だったので、大変厳しく鍛えられましたね。北京ではまな板の担当が5つに分かれていて、葉野菜ぐらいしか切らせてもらえない「5番板」からスタートし、徐々にお肉やお魚を切らせてもらえるようになります。僕も最初は5番板から入ったのですが、朝早くに出勤して、前菜担当の先輩の仕事が楽になるように、蒸し鶏などをバラして用意するようにしていたんです。すると先輩に「この仕事、お前がやっていいよ」と言ってもらえるようになり、徐々にできることが増えていきました。僕は手先が器用だったので、仕事をどんどん経験させた方がいいと思われたのかもしれないですね。

 

オリジナリティを買われて料理長に抜擢

―――北京では料理長を務められましたが、どのような経緯で抜擢されたのでしょうか?

直前まで自分に決まるとは思っていなかったんですよ。一応半年ほど前に「心構えをしておいてください」と社長から言われていたんですが、僕の上に先輩方がたくさんいらっしゃいましたし、総料理長も現役だったので、まさか本当になるとは思わず、実際に決まった時はびっくりしました。

―――料理長に選ばれた決め手は何だったのでしょうか?

普段からちょっと変わったことをやっていたからですかね。北京では、伝統的な北京料理のメニューと、総料理長のオリジナルメニューとがあり、それぞれのレシピをきちんと守るのが料理人の基本でした。僕も伝統料理に関しては基本の味付けを一切変えずにやっていましたが、オリジナルメニューではわりと遊び心を取り入れてつくっていたんです。

それは賄いをつくる時にも実践していて、週に1、2回は当番になるので、先輩方や料理長に僕がつくったものを食べてもらっていました。その時に「あれ、味変えた?」などと言われることもあったので、自分の味付けをおもしろがってもらえていたのかもしれないですね。

毎日食べても飽きのこない麺料理

―――料理長になられてから北京の麺を変更される際に、はしづめ製麺をお選びいただきました。弊社の麺を知ったきっかけは何でしたか?

当時使っていた麺があまりしっくりきていなかったので、もっと美味しい麺がないか探していた時に、芝パークホテル本店の方からはしづめ製麺さんのことを紹介されたのがきっかけでした。

北京で提供している麺料理は、コース料理の最後にお出しする光麺がメインなので、どちらかといえば味が薄めの、シンプルなスープに合うものを求めていました。はしづめ製麺さんに相談したところ、卵と小麦だけのシンプルで柔らかい麺を特注で制作していただきました。

麺を変えたばかりの頃は、常連のお客様から柔らかさを指摘されることもありましたが、ラーメンのようにがっつりとした麺料理というよりは、胃に優しくて、毎日食べても飽きないものを目指していたので、次第にこちらの方が良いと言われるようになりました。僕自身、以前はかん水の入った歯ごたえのある麺が好きだったんですけど、何度も食べていくうちに、気づけばこの麺が食べたくなっていましたね。

 

制約のないオリジナリティが発揮できる「宮廷中国菜FULONG」

―――北京を独立して「宮廷中国菜 FULONG」を開業されるまでの経緯を教えてください。

北京に入ってからはとんとん拍子に出世が決まり、料理長の仕事も楽しんでいたのですが、自分としては料理をつくっているだけの状態がいちばんだと思っていたんです。料理長になるとお店の経営や人材育成、衛生管理、商品開発など、さまざまな仕事をしなくてはならないですし、パソコン仕事が増えてしまっていたんですよね。

コロナ真っ只中の2020年に、この場所で四川料理のお店をされていた方が年内で辞められる話を聞き、そのことが独立を考えるきっかけになりました。もともと自分のお店はやりたいと思っていましたし、コロナ禍で今後のことを考えていたタイミングで、前の店主さんから「この場所でやってくれるなら、ぜひお願いしたい」と言っていただけたので、独立を決めました。

―――「宮廷中国菜FULONG」をはじめるにあたり、メニューやレシピにおいて新しい挑戦はありましたか?

これまでは基本的にはお店の味を変えずに守っていました。もちろん、クオリティを上げるためにやり方を変えることはありましたが、北京では香辛料や内臓系を使ったインパクトのある料理は好まれなかったので、メニューに制約があったんです。ここは自分の店なので好きにやれますし、これまではできなかったものがつくれていると思います。

メニューに関しては、「僕はこっちの方が好きだな」と以前から思っていたことを、自分流のアレンジとして取り入れています。例えば麻婆豆腐の場合、辛い味付けのものを白いご飯と一緒にかき込んで食べるのがいちばんだと思うので、四川料理寄りの辛さで調理しています。また、現在出している「FULONG風 ピリ辛混ぜそば」は、汁なし坦々麺を自分なりにアレンジしたものです。一般的には練りごまやクルミ、カシューナッツなどのペーストを使うところを、ここに来る年齢層高めのお客様に合わせて、あまりこってりさせずに、シンプルに仕上げています。

―――ちなみにレシピはどのようにストックされているのでしょうか?

大体頭の中に入っていますね。メモすることもありますけど、殴り書きを残しているだけなので、後で見返しても「これ何て書いてあるんだっけ?」となったり(笑)。

―――北京から引き続き、FULONGでもはしづめ製麺の麺をお使いいただいています。

開店準備を進める中、わざわざ府中まで商品を送っていただくのも申し訳ないかなと思い、近所の製麺屋さんを探していたんですが、「なんでうちの麺を使わないんですか!?」とお電話をいただきまして(笑)。ちょうどその頃、うどんのような喉越しの麺を探していたので、そのことを伝えたところ、おすすめの麺として持っていただいたのが、最高級の小麦粉・金斗雲を使った特製麺でした。試食した瞬間に「これがいい」と、すぐに決めましたね。普通の中華麺よりも喉越しが良く、温かくても美味しいですが、特に冷やした料理に合う麺だと思います。

 

お客様の要望から生まれた、キャビアを使った特別メニュー

―――FULONGで提供されている麺料理について教えてください。

基本的にFULONGで提供している麺料理は、汁なし坦々麺とコースの最後に出すシンプルな光麺の2種類だけですが、お客様に頼まれた時だけ出している特別なメニューがあります。

もともとは、あるお客様からの依頼でつくったのがきっかけで生まれたメニューでした。キャビアが大好きな方なので、冷たい麺と合わせてみたらどうだろうと、ある日アイデアを捻り出してつくってみたら、とても喜んでいただけたんです。現在は頼まれた時だけの裏メニューとして提供しています。はしづめ製麺さんの麺はもちろん、トマトやキャビアといったそれぞれの食材の美味しさが合わさることで、さらに美味しくなるように仕上げています。

―――小峯さんの料理の特徴は、シンプルで上品な味付けにあると思います。上品さを出すための秘訣はありますか?

宮廷料理はもともとこってりしたものではないので、塩味の料理が続いても飽きさせないような味付けを意識しています。塩だけで勝負する料理は、ぐっと難易度が上がるんですよ。例えばこの裏メニューの場合、料理全体で旨味を出すために、甘さのあるフルーツトマトと塩味のあるキャビアを合わせ、干し貝柱の出汁を入れて味付けし、レモンでしめています。

塩味の付け方というのは料理において大事で、塩を手で掴んだり、お玉を使って醤油で味付けしたりする際に、「このぐらいの量だな」という塩梅が、自分の頭の中でわかっていないといけない。自分の舌の感覚とセンス、そして経験が合わさることで、はじめて狙った通りの味付けができるようになります。

 

麺の適切な状態を見極める感覚

―――小峯さんにとって、料理におけるこだわりとは何ですか?

出来立てがいちばん美味しい料理を出すことですね。これは麺料理に限らず、すべてのメニューに言えることですが、とにかく時間と温度が大事です。麺料理は10秒でも経てば伸びてしまうので、麺を茹でる時は、お客様がテーブルに届いた瞬間が一番美味しい状態になるように、茹で時間と温度を頭の中で計算しながら、ベストのタイミングを考えています。それは北京時代から変わらず心がけていることです。

―――はしづめ製麺では、「五感でつくる麺づくり」をブランドコンセプトに掲げています。料理に向き合う際に五感を意識することはありますか?

麺料理は本来、きちんと時間を測る必要がありますが、同じ茹で時間でも、その日の状態によって麺の固さは変わってきます。なので、僕はタイマーを使わずに、きちんと麺の状況を見ることや、指先で触ったり、匂いをかいだりするようにしていて、その感覚を大事にしています。これはたぶん、これまでの経験で勝手に身についたものだと思います。

―――最後に、FULONGの今後についてお聞かせください。

これからは夜に出しているコース料理にさらに力を入れていきたいと思っています。基本的に季節ごとの野菜や魚、肉をベースにメニューを考えるので、夏ならアワビ、秋口になったら鹿肉、冬になったら上海蟹など、旬の食材を使ったコースを2、3ヶ月ごとに刷新するようにしています。季節によってメイン料理を決めていくので、コース料理はつくっていて楽しいですね。これからは評判のいいメニューを残しつつ、毎年バージョンアップさせた料理をつくっていきたいと思います。

 

プロフィール

小峯 愼志 氏

調理師学校卒業後、都内の上海系中国料理店で修行をかさねる。
1989年 芝パークホテル入社。「北京」帝国ホテル店で腕をふるう。
1996年 「北京」御殿山ヒルズホテルラフォーレ東京店の料理長に就任。
2008年 「北京」帝国ホテル店リニューアルオープンの際に料理長に就任。
2021年 オーナシェフとして独立。宮廷中国菜FULONGをオープン。

宮廷中国菜 FULONG

ウェブサイト
https://fulong-fuchu.com/
住所
東京都府中市八幡町3-17-15 ともや本社ビル8F
営業時間
月・木・金
Lunch 11:30 ~ 14:30 (L.O. 14:00)
Dinner【予約制】17:30 ~ 21:30 (L.O. 20:30)
土・日・祝
Lunch【予約制】12:00 ~ 15:00 (L.O. 14:30)
Dinner【予約制】17:30 ~ 21:30 (L.O. 20:30)
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